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東京高等裁判所 昭和24年(新を)345号 判決 1950年7月20日

被告人

坂倉正

主文

本件控訴はこれを棄却する。

理由

前略、第三点。論旨は原判決は法律適用の部に於て、単に法条を掲ぐるのみであつて、判示事実と如何にタイアツプするか不明であるから、破棄を免がれないというにある。よつて原判決を検するに、単に法条を列挙しておること所論の通りである。而して、記録を検討するに、本件は、刑事訴訟規則施行規則第三条所定の事件でないから同条第一項第五号所定の如く法令を掲げ、法令の適用を示すのみでは不充分であると解しなければならない。しかるに、原判決は単に、法令の名称、当該法条を掲ぐるのみで、如何なる法令法条が判示事実中何れに該当するかを示さず、且つ法条適用に関する順序方法等、法律上の要請に遵由するものであることを明示しない点に於て、充分満足すべきものでないこと、洵に所論の如くである。しかし、法令の適用を示す目的は主として裁判の公正保持と、被告人の利益保護に存するものと解せられる。然るに、原判決を検討するに、その記載の順序、内容等から記載の各法令法条中、刑法第二百五十六条第二項罰金等臨時措置法第三条第一項第一号刑法第六条は判示第一事実に、刑法第二百三十五条は判示第二事実に、各該当し、同四十五条第四十七条第十条刑法施行法第三条第三項は以上各所有の併合罪加重の適条を示すものである。刑法第十八条は罰金不完納の場合の措置で各判示事実中、何れの法条が所論所謂タイアツプしておるかは明白である。従つて、かかる法令適用方法のため本裁判の公正を害し被告人の利益を侵したと認むべき点はないと解せられるから前掲のような原判決の欠陥は直ちにこれを違法とし、又は、少くとも判決に影響を与うる違法あるものとは認められない。論旨理由ないものである。

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